Modifying Arcam CD72 CD Player as of Aug.4 2004

さて、DAC、バーブラウンPCM1716Eのアナログ電源回りの改造だ。
元ネタは、前回引用した下記掲示板の議論。
http://www.diyaudio.com/forums/showthread.php?threadid=15020

昨晩、今晩は大仕事だぞぉ、と思い、事前に家内に今晩はずっと閉じ篭っているからね、と念を押してから作業開始だ。
作業内容の予定は下記。
・DACのEXTL、EXTR(左右アナログコモン端子)にパスコン追加
・DACのVcc2LとVcc2Rのデカップリングの独立化とパスコン追加
・ずっと気になっていて、前回OS-CON 22uFに交換したコンデンサのファンクションの確認
・前回 MUSE BP 10uF/50Vに交換した出力カップリングの交換

最初の2項目は上リンク先の掲示板でのある1名の発言を忠実に追うもの。
3番目は、オリジナルCD72基板の上ではSilmic 22uF/25Vだった奴の謎。何故ここに基板上で一番コストパフォーマンスの悪い、つまり容量の割に高価なオーディオ用コンデンサが使われていたのか、をそろそろきちんと究明しなければならない。
4番目は、やっぱりまずはアナログ系はBlackGateで統一しておこう、というのがこころ。細かいチューニングは後でいいや。


まず、22uFのパターンを追ってみる。
5Vの3端子レギュレータの出力をすぐデカップリングし、その後すぐに、縦に実装されているなにやらTTLの乗ってる子基板に入って行っている。前はここで追うのをやめてしまい、あーデジタルか、と安易にOS-CONにしてしまった箇所だ。
今回はめげずに子基盤のパターンも追ってみると、なんとこの線、すぐに別のピンでメイン基板に戻ってるじゃないか。くそ。で、その先はDACの電源で、DACの近辺で主として次の3系統に分岐している。
・抵抗で若干ダンプされてVddに
・Rubycon NP 10uF/50V(オリジナル状態。今はBlackGate NX 470uF/6.3V)でデカップルされてDACのVcc1に
・「素」のまま(680pFのパスコンのみ)Vcc2LとVcc2Rに

うーむ、なんてこったい。
上の掲示板で「重要だかんな」って言われてたVcc2LとVcc2Rのデカップリングコンデンサが、延々基板や子基板を走った先の22uF(一応Silmic)で、おまけに左右共通かよ。パターンが引けなかったってことは考え難いし部品も置けるはずだし、なんでこーなってんだ、ARCAM!680pFのとこに10uFでも置けばまだいいじゃん。この設計で、DACのアナログ電源に高級オーディオ用コンデンサを採用、なんて言ってたら殴っちゃうぞ。

前回の改造後、ちょっと音がラフに雑に(特にAD827JNで)なった気がしていたのだが、これはDACのVcc2LとVcc2RのデカップリングをOS-CON、しかも鉄リードのに替えてしまったせいだったのか。いや、きっとそうに違いない。そこで速攻でOS-CON外して、BlackGate N 100uF/16Vに替えた。

さらに、前回私がBG NX 470uF/6.3Vに替えてDACのアナログ電源は完璧だぜ、などと思っていたのは実はVcc1だけの話で、Vcc2L/RLにはほとんど関係がない。Vcc2L/RについてはDAC近辺でLとRを分けて大きめのを載せたいところだけれど、手持ちの大き目で2個以上あるのはBG NX 680uF/35Vで本当に大きい。載らない。
ここで使えそうな手持ちのコンデンサはBG N 100uF/16Vが1個とBG N 10uF/50Vが数個。そこで、DAC近辺のVcc2L/R共通の電源ラインから基板に穴開けて部品面で100uFでまとめてデカップリング、DACのVcc2LとVcc2Rのピンに線材を直付けして基板に穴開けて上に出して10uFで個別にデカップリング、GNDはデジタルアース集結点から3本個別に基板の部品面に引っ張り出す、という方針で行くことにした。これらは部品面での配線になるからパスコンは後からでもどうにかなるだろう。
上の英文掲示板の発言者が、電源デカップリング以上に重要性を喚起していたアナログコモン端子(EXTRとEXTL)のパスコンだが、1200pFの銅スチコンがぎりぎり基板裏とシャーシの間に入りそうなので、パターン面でICピン直結でやろう。

実は、PCM1716で隠れている部分のパターンが見えないので、上の方針は少しあてずっぽうの面がある。Vcc2L(PIN#20)に入った電源パターンがそのままIC下を通ってVcc2R(PIN#9)に繋がっているのだろう(上から見るとVcc2RはNCに見えている)と想像しているのだが、Vcc2RにICの下で別の方からの電源が入って来ているとすると、Vcc2L側だけ100uF分余計にデカップリングが入ることになってしまう。もっとまじめにパターンを追って、パターンカットでもしながらテスターで当たれば分かるのだけどそこまでするのもなんだし。大勢には影響ないだろうから、これで行ってしまおう。おかしかったら100uF切ってしまえば左右平等になるわけだし。一応バーブラウンのスペックシート推奨のVcc2R/Lのデカップリングコンデンサ容量は1〜10uFだからBG N 10uF/50Vで文句を言われることもあるまい。


さて、とにかく方針が決まったので作業開始だ。


Fig.1 ICピンに直付け中
1.27mmピッチだろうと思っていたのだが、妙に細かい。調べたら 28LEAD SSOP EIAJ TYPE II、0.65mmピッチ!(表面実装部品のパッケージ規格は全世界でEIAJ型名が共通語らしい。ピン間のサイズなんかもmmでの区切りが良くなってるし)。拡大鏡がないと何も見えないし手も震えるし、ハンダは1mmのしかないからペンチで潰してニッパで細く切って使うしかない。黄色い線材が被服込みでφ1.0だから細かさの想像が付くと思う。これ、銅単線だったのだけど撚り線の方が楽だったかもしれない。TDA1543化なんてのは私の実装技術的に100%却下だ。右下はこの界隈のデジタル系GNDの結節点


Fig.2 ハンダ付け終了
今度この類をやるときは、もっと細いコテ先と細いハンダを用意しよう


Fig.3 初めてのホットメルト
固めずに線とか銅スチコン動かして2回ハンダが取れて、先に進む前にホットメルトで留めるものなのだな、と学習した。しかしばっちぃな。部品面にリード直付けの線が出ているので、将来断線などがあっても検出が楽なのが救いだ


Fig.4 部品面
中央上の赤が「謎のSilmic22uF」だったところ。その奥の、前回無闇に2200uFにした奴は、クロック発振回路専用の電源らしい。Arcamはクロック発振回路の電源の重要性については充分認識していたようなので、高精度水晶発振器への交換の際には、まずは既存の5Vを使ってみようと思う。中央ちょっと上の大きめのOS-CONはVddデカップリング用の470uF。中央ちょっと下の赤い大きめ2個がEXTL/R(アナログコモン端子)用の470uF/6.3V。今回パターン面で銅スチコンでバイパスしたやつ。その左下の同じ大きさの奴はVcc1デカップリング用の470uF/6.3V。ひっくり返っている3つのうち、大きい奴がVcc2L/R共通の100uF/16V、小さい2つがLとRの10uF/50V。今後、気が向いたら10uFに銅スチコンをパラに繋ぐつもり


Fig.5 恐怖の結線
今回はいろいろやったので、コンデンサ砲やIC砲を裂けるために姿勢を低くして一撃離脱方式で電源を投入した。全然OK。わたくしちょっと才能あるのかも知れない。左上、SBDでのブリッジ整流に付けていたスナバー回路がいつのまにか外れている。とりあえず当面はハイスピード命。OPアンプの向こうに見える赤2つが、MUSE BPと交替したBlackGate N 10uF/50V。BlcakGateのサイトによれば、これを極性(銅スチコンの極性のようなもの?)を逆にしてパラにするとベター、らしい


普通なら一晩程度エージングをかける前に音を聴いたりはしないのだけど、えらく大掛かりな作業だったし論理的にも正しい作業であったので、結線直後、気になってちょこっと聞いてみようと思った。結局ちょこっとのはずが1時間以上聴きふけることになってしまった。
これは良い。豹変、とはこのことだ。
一連のCD72に対する改造の中で、あきらかに最大の変化、そして明白に良い方向への変化である。昨日までの音は、ある種のJAZZだけなら気心の知れた人になら聴いてもらってもいいかな、という程度の、迫力だけのバランスの悪い実は結構しょーもない音だった。潤い、それ食えるのか?艶、だれか亡くなったのか?といった乗り。
今回のは(エージングで変わってしまったら悲しいぞ)大変にバランスが良い。とにかく懸案だった高域の雰囲気感が出てきたし、引っ込みがちだったボーカルも艶やかだ。ディテールが損なわれることもなく、演奏ノイズが気になり過ぎることもない。ここまでやってようやく、オリジナルのCD72に対して総合点で上に行った、と感じた。

試しにOPアンプ電源の電解コンユニットを弐号機に替えて聴いてもみた。エージング不足の点は差し引かなければならないが、音が遅い。今回のDAC回りの改造の前は、初号機には荒々しすぎる感じがあり、弐号機の方がバランスという面では良かったのだが、今回の改造後の初号機での音には荒々しさなど微塵もない。荒々しかったのは改造前のDAC回りで、初号機の方が再生のキャパが広い分、その荒々しさをそのまま出してしまったのかも知れない。
オリジナルのCD72のバランスは、荒々しい感じのDAC回りと、おとなしめの出力段とのバランスで作られていたのかもしれない。

OPアンプをOPA627にするとどう鳴るか、ますます興味が湧いてきた。


おまけ。
今回の改造記を通じて画像の撮影は、コダックが日本以外で発売しているEasyShareシリーズというデジタルカメラで撮影した。操作性がちょっと特殊、電源を切ると設定をすぐ忘れてしまうしカスタマイズもできない、1/2.5インチ5MPのCCDのせいかレンズ周辺解像度やISO感度増感時ノイズが辛い、など不満な点はあるが、小さくて邪魔にならない、そこそこ接写できる、接写時のストロボ調光もいい感じが多い、という理由で今回のような撮影には重宝している。小さなダイオードの型名確認や、フラッシュを炊いて接写することでの抵抗器のカラーコード確認などにも便利に使える。


Fig.6 Kodak EasyShare LS753


<追記>
Silmicの謎、会社の電気屋(元、日本のメーカーでオーディオ機器設計)に聞いてみた。
「それでも特性値は出てたんだろ?」 ... でもイギリスの小さなメーカーだから聴いて評価してるんぢゃ...?
「ベースの設計をできる奴がやって、あんまりできない奴がバリエーション設計したんだ」 ... あり得るかも
「設計者の意図がアートワーク屋にきちんと伝わってなかったとか」 ... それもあり得る
「間違ってパターン引いてしまって、しょうがないから高級部品入れてごまかした」 ... うーむ
まー日本国内の定価で8万円台の機械だからそんなとこか。


Aug.4 2004
chiaki014@mac.com


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