2000年アンプ

塗装に付いて

 拙作 HP を看て下さった方々より塗装に付いての問い合わせが幾つか在りましたので、私が知り得る限りで書きます。
塗装の世界は奥深いモノで、此処に記すことが全てではありません。塗装分野のほんの一部です。 之を読んで「大変だ
・・・こんなのとても出来ない」と思わないで下さい。 之は私の25年に亘る失敗の繰り返しと、其の度に周囲に居る・
その道のプロ達からの助言に依る蓄積ですから......塗装は時間との勝負、粘り強く・根気あるのみです。

素人が入手出来る塗料は、塗料表記が同一であっても溶剤・使用方法が異なる場合があります。添付の取扱説明書や塗料
缶に書かれた文章を良く読んで・納得の上・購入して下さい。仕様書通りに取り扱わないと「失敗する」と思って下さい。
理解出来ない場合は、メーカーへ問い合わせて下さい。窓口で答えられない場合も多々あります。そのような場合は専門
部署(研究所)等へ回してもらって下さい。

塗料の分類(難易度は上から下の順と御考え下さい);全て温度(気温)依存ありと思って下さい

                     ┌─アクリル(エマルジョン系)塗料(溶剤;通常は水)
      ┌─溶剤の蒸発に依る硬化───┼─ニス(溶剤;専用又は水)、ラッカー(溶剤;ラッカーシンナー)
      │ (手塗り、スプレーあり) ├─オイルペンキ・ビニールペンキ(溶剤;通称ペイント薄め液、又は水)
      │              └─合成漆(カシュー)(溶剤;専用、又はペイント薄め液)
      │ 
 常温塗料─┼─科学変化に依る硬化────┬─1液ウレタン(溶剤;専用)
      │ (手塗り、スプレーあり) └─2液ウレタン(溶剤;専用)
      │ 
      └─空気中の水分を吸って硬化─┬─天然漆(溶剤;? 私は免疫が無いので使用経験無し)
           (手塗り)     └─1部の瞬間接着剤(溶剤;アセトン)

 焼付塗料───1定の温度・時間管理の許─┬─エナメル塗料(溶剤;専用、又はペイント薄め液)
                     └─焼付塗料(溶剤;専用)

 常温塗料は20゚C〜30゚C位の常温・低湿度の許・使用する事を原則としています。 湿度の多い時に用いると「カブリ=
空気中水分を取り込んで白濁する」を生じます。 急ぐ余り・ドライヤー等で過熱しますと、表面から乾燥・硬化・収縮
が急激に始まる為、皺が出来たりケロイド状に成ったり(塗料が形成する膜の質に依る)、果ては溶剤が内部から浮き上が
って来たり気泡が出来たり・パンクしたり・という散々な結果と成ります。 内部は柔らかいままですから......

 焼付塗料は130゚C〜190゚C位の炉の中で、一定の温度管理の許・焼き付けします。 遠赤外線を用います。 昔・自動
車の板金塗装工場でよく見掛けた・架台に取り付けた熱いランプを覚えていると思います。あれが焼き付け塗装の簡易型
です(現在メーカー支給の塗料は、アクリルエマルジョン系に変わった為・見掛けなく成りました)。  此の塗料は素人
にとって馴染み薄ですが、余り大きくない物であれば簡易な方法で可能です。ただし塗料の入手が出来ればの話です。オ
ーブントースターで遣ります。通常のモノでは「勘」が頼りですが、温度調整付きオーブンが在れば最高です。 焼き付
け温度・時間は、塗料にも依りますが5分〜15分位です。 昔の職人は、石油缶を加工して下部に電熱器を仕込み、途中
に鉄板・ステージ・耐熱ガラスの覗き穴等を設けて自作したそうです。

塗料使用にあたって;
 塗装方法には、スプレー缶塗装、手(刷毛)塗り、エァブラシ塗装、コンプレッサーに依る吹付け塗装等が在りますが、
 前2者が一般的と思われます。 エァブラシ塗装は通常ガスボンベ(小型のコンプレッサーもあり)を使用しますが、
 ノズル形状・ボンベの圧力に限界が在り粘度の高い物は概して不可です。精々、ニス・ラッカー程度に止めます。アク
 リルエマルジョン系はお勧めしかねます。 業務用コンプレッサーに依る吹付け塗装は・ある意味理想ですが、此処迄
 遣る方は居られないと思います。

 スプレー缶使用の場合;アルミ、鉄、合成樹脂 等

  当然の事ながらスプレー缶の場合、色は限定されます。微妙な色を望む場合は手塗です。

  一番多いのは「アルミ」(ジュラルミンを含む)と思われますので、之に付いて書きます。
  アルミ塗装は金属塗装の中でも最も難易度の高いもの、と云われています。 第1に下地造りが面倒なこと、第2に
  理想的なプライマーが入手困難(基本的には業務用のみ)なことです。 プライマーとは母材=此の場合はアルミと
  塗料の継なぎ手の役割をします。 今迄使った中で素人にも入手可能なプライマーとして「38-68 スーパーマルチ ミ
  ッチャク剤」が在ります。焼付け塗装のプライマーとしても「可」とあります。専門店と東急ハンズで入手出来ます。
  (アルミ専用のプライマーの色は「黄緑色」をしています。あの忌わしい御巣鷹山事故の時の圧力隔壁の色と似てい
  ます。従って顔料塗装でない限り使えません。 ミッチャク剤 は殆ど無色透明です。)

  アルミの下地造りは、#320〜#500 番位の耐水ペーパーでヤスリます。 必ず板の一方のはじから他方の端へ向か
  って一方向のみヤスリます。決して往復ヤスッてはいけません。  一面ヤスリ終えたら板を30度位回し、今度は対
  角上を前回同様一方向へヤスリます。 斯様に60度・90度・120度・・・と一周します。 この後「酸洗い」した
  のち念入りに水洗、ウェスで水を拭き取ります。酸洗いには、トイレの洗剤「サンポール」が安価で入手も簡単です。
  源液のままでもよし、多少水で希釈してもよしです。(此の下地造りの手法は非鉄金属加工の専門家から伝授された
  もので、理由は説明されたが良く解りませんでした・・・何でもミクロンレベルのことだそうです。) 乾燥ののち
  ミッチャク剤 を吹き付けます。 吹付け塗装の原則は、決して(垂れる程)厚吹きしないこと・吹き口と目的物の
  距離を取扱説明より5cm位余計に離すこと・塗料の半分は無駄に成る=空中に飛散してしまう覚悟でやることです。

  続いて吹付け塗装に入りますが、ミッチャク剤 の乾燥時間は必ず守って下さい。乾燥迄の時間は温度(季節)に依
  存します。之は本塗装の2度吹きめ・3度吹きめにも云えます。 最低3度以上は吹いて下さい。 もし、1日の工
  程で終わらず中断した場合・翌日もしくは数日後の場合は、まず塗装面の匂いを嗅ぎます。溶剤の匂いが在る程度残
  っている場合そのまま吹きますが、之が少ない・無い場合は#500 番位の耐水ペーパーで軽くヤスリ・表面積を増や
  してから吹き付けます。ここでは最低2工程吹き付けします。

  上記工程迄で充分ですが・もう一つ上を目指す場合は、車用のワックスとコンパウンドを用います。
  塗料が完全に乾いた状態(溶剤の匂いがしなくなってから)で、車用のコンパウンド、またはピカール(真鍮磨き)
  を用いて軽く磨き上げます。 ウェスで乾拭きののちワックス掛けします。これは車の時と同様にして下さい。
  此処迄してしまうと、再塗装の際にワックスが災いします。下記の「再塗装」の項を参考にして下さい。

  塗料の種類
   ラッカー・ニス関係が溶剤を含め安価でお手頃ですが、塗装面の強度はそれなり(簡単に傷が付く)です。
   アクリルエマルジョン系は強度は上ですが、ちょっとボテッと仕上ります。オイルペンキも同様で透明度が少なく、
   仕上がりはイマイチです。車用の塗料が手に入ればベストと思います。 もう少し上を望まれる場合は2液ウレタ
   ンをお使い下さい。強度も充分・仕上がりも大変綺麗です。欠点は、一度混合した塗料(ボンベの中身)は所定時
   間内に使い切らなければ成らないことです。 アクリルエマルジョン系で溶剤が「水」の場合は錆が出る可能性が
   ありますので、鉄製シャシーに吹いてはいけません。少なくともオイルペンキ以上にして下さい。
   合成樹脂系のシャシー・ケースに使う場合は、アクリルエマルジョン系で溶剤が「水」をお使い下さい。溶剤がケ
   ースを溶かす心配がないからです。溶剤が水であることが見分けられない場合は、用具の手入れ欄に「水」で云々
   と書いてあります。

   吹付け塗装は、風の無い・湿度の少ない・気温が在る程度高い日を選ばなければ成りません。
   塗装一般に云えることですが、一度の塗厚を厚くして塗り回数を少なくするより、一度の塗厚を薄くして塗り回数
   を多くすることです。 とにかく急がず・粘り強く・じっくり時間を掛ける、これが成功の秘訣です。

 刷毛塗りの場合;木製シャーシー

  もちろんスプレー缶を使用しても良い訳です。其の場合は上記と同一の方法で行います。 但し、厚塗り・研ぎ出し
  塗装の様な重厚な仕上を望むべくもありません。それを望むのなら相当数のスプレー缶を消費します。プライマーは
  使用・不使用どちらでも OK です。

  最高の仕上を目指すのなら研ぎ出し塗装です。此の場合、其れなりの用具を揃えることに成ります。

  刷毛は平刷毛で塗料の種類に依って、腰の弱いもの、中位のもの、強いものが必要と成ります。使い分けは粘性の弱
  い塗料→粘性の強い塗料と成ります。 合成漆・漆は「漆刷毛」をわざわざ買わなくても、腰の強い刷毛を買って穂
  先を7割くらい斜にカットすれば流用出来ます。「塗る」と云うより塗料を置いてから「引く」と云う感じです。

  もう一つの用具は、耐水ペーパーです。#120,#180,#230,#320,#500,#1000,#1500番手位と、アルミ溝型鋼
  (通称チャンネル・・・Cチャンネルではない)の40x20 L=150mm ,L=300mm(シャシーの短辺をカバーする長
  さ)を取り揃える。耐水ペーパーをチャンネルの3面へ、各々水性ボンドを篦で均等に塗り、貼り合わせます。1日
  放置すると乾燥します。之を用いて木の表面を平らに削ったり、塗料の研ぎ出しに使います。 塗料の研ぎ出しの際
  は塗装面に水を打ちながら研ぎますので、アルミチャンネルでないと困るのです。塗装の本には整形された角材で等
  と書いてありますが水を含むと変型するからです。研ぎ出し程度の使用では、水溶性ボンドは分解剥離しません。耐
  水ペーパーが劣化して使えなく成ったら、1日程水桶に浸しておけば、分解剥離します。又、新しい耐水ペーパーを
  貼れば良い訳です。
  仕上げ研ぎ出しに使う耐水ペーパーは「番手が細かければ良い」かと云うと、そうではありません。耐水ペーパーの
  表面は、平坦ではないのです。2〜3度使用したものか、新品であれば2枚摺り合わせて表面を平坦にしたモノを使
  って下さい。こうして無駄なく合理的に・ボロボロに成るまで使い回す訳です。
  もう一つの用具は「マチ針」です。曲がって使わなく成ったもので充分です。之は塗装面に残った刷毛毛とか糸ホコ
  リを除去する時に使います。
  使い捨て用具は、アイスクリーム、プリン等の容器です。紙製のモノは溶剤にも変化しないので良です。

  手塗り塗装の原則は一回の工程で「厚塗りをしない」、「かえし刷毛(往復塗り)をしない」です。
  もちろん風の無い・湿度の少ない・できるだけ気温が高い日を選ばなければ成りません。

 木製シャーシーの下地造りと塗装

  チークとか檜のような油分の多い材の接着(私は接着面の油分取りにシンナーを使う)は躊躇しますが、塗装は其れ
  程気にする必要はない様です。 水溶性塗料を使う場合は、未加工の状態で少し工夫をした方が良いと思います。
  電子レンジにて5分程チンすると、かなりな油分が抜けます。 実際、現代の能面作家の隠れたテクニックです。
  昔の作家は、どう遣っていたのだろう???   と云う話は置いておいて
  肌理の細かい材料は、耐水ペーパーで研ぐと「つるつる」に成ります。 チークの様な材料は「ラッキョの皮剥き」
  状態になりますので、適当な処で切り上げます。 あとは塗料で下地造りです。これが厄介なのです。

  塗装の前に着色作業の話をします。木材の着色と云えばお馴染みの「オイルステイン」が在ります。実は之は余りお
  勧めしません。理由は顔料だからです。私等が建築現場でのオイルステイン作業は、どのようにしているかの種明か
  しをします。赤・黄・黒のオイルペンキを少量づつ別容器に取り出します。狙っている色合いに混合します。此のの
  ちオイル(溶剤)で薄めて目的の半端材に塗る訳です。少しずつ混合比を変えて目的の色迄持っていく訳です。こう
  して決まった色を一現場に必要なだけ造り出す訳です。顔料を加えた塗料を木材に塗ると、透明度が落ちます。透明
  度を落とさずに遣る方法は「染料」を用います。
  一番身近な染料は、皮革用のアルコール染料です。之は当然水で薄めて使います。染める相手の木にも水を打ってお
  きます。こうすると比較的ムラ無く染まります。 最近は、恥ずかしい事に我々業界でも「しなベニヤ」にオイルス
  テインを掛ける者がいます。「しなベニヤ」は元々オイルペンキの下地材として用意されたモノで、オイルステイン
  を掛けると「ブチ」に成るのです。ところが上記アルコール染料を用いると、旨く染まるので困ったものです。

  木材の表面は山在り谷在りです。之を塗料で埋めていく訳です。1度目の下地塗の時に、木目に逆らって=毛羽を立
  たせる様に気持ち厚めに塗ります。 ある程度充分に乾燥させたのち、#500番位の耐水ペーパーを二つ折りにして
  手に持って、木目に逆らって表面を優しくなぜます。こうすると毛羽が旨く取れます。1度塗ると材に沿って塗料が
  載っていきます。 3度程塗っては山の部分を削り取る訳です。此の時・水研ぎをします。
  この工程を3〜4度程繰り返すと、谷の部分はなくなり・ほぼ平坦に成ります。 これで下地造りは完了です。
  最近の2液ウレタン塗料には下地造り用のサンデングシーラー(研磨剤)入りのものが在ります。 これが誠に優れ
  モノなのです。水研ぎが真に楽に成りました(短時間で完了)。

  こうして下地が出来上がったら、仕上塗装です。 仕上げ用の2液ウレタン刷毛塗りでも良し、スプレーの1液ウレ
  タン・2液ウレタンでも良しです。

 既製シャーシへの再塗装

  既存塗装を剥がすのには「剥離剤」を用います。瓶詰め・スプレー缶双方が在りますが、最近はスプレー缶の方が多
  く成りました。 成分はジクロロメタンですので、取扱には充分注意して下さい。 一度で剥離する事は稀ですので、
  数回繰り返す必要が在ります。 一番恐いのは下地をダメにする事があります。 見え難い所で試す必要が在ります。
  既製品は通常・焼付け塗装していますので、作業は困難を極めます。最後の手段は上記用具を使って「水研ぎ」です。

  以降「スプレー缶使用の場合」と同様な作業工程を繰り返します。

  残存塗料が在る上に塗り重ねしますと、場合に依っては塗装面に異常を来すことがあります。特に強い皮膜を形成す
  る塗料に有りがちですから、古い塗料は確実に剥離して下さい。
  塗装作業の途中で、種類の異なる塗料の塗重ねは避けた方が良いと思います。 時として上記の様な状態に成ったり
  皺が出来たりして、せっかくの努力が無駄に成ります。 ウレタン、合成漆などは同一塗料であっても、気温、湿度、
  乾き具合、塗厚に依っては皺が出ます。

落ち着いた仕上りにするテクニック

 仕上塗装のままですと、かなりな艶が在ります。 外で雨曝しに成る様な場合は、耐久性を持たせる為・ある程度は止
むを得ないことですが、室内で使うのが前提ですから此処は「半艶消し」塗装が良いでしょう。勿論「ピカピカ」がお好
きな方は御自由に・・・。 半艶消しの遣り方は2通り在ります。 まず第1は塗料の中に艶消し剤を混入する事です。
之の材料は高価である事と、取扱が難しい点です。勘が頼りだからです。
割と簡単なのは、仕上った塗装の表面を#500位の耐水ペーパーで、わざと水研ぎするのです。 乾燥させたのち、コン
パウンドとワックスを使って研ぎ出す訳です。 自分の好みの「半艶消し」に仕上げる事が可能です。

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 さまざまな塗料が市販されています。当然使用用途に依って多種在る訳ですが、シャシー塗装の様に限定された場合は
何種類もの塗料に手を出すより、2液ウレタン1種に絞る方が賢明と思います。 多種に手を出すと、マスターするのに
時間を要する事、手を出した数だけ溶剤が増える事(私の棚は溶剤だらけ)、何よりも塗料は高価であるからです。
 2液ウレタンは難易度が高い方ですが、これをクリアする一方は、失敗しても良い身の回りの小物へ試してみる事から
始めることです。そう云う意味ではスプレー缶よりは手塗の方が優れています。小出しで使えて無駄が少ないからです。
2液ウレタンは混合しない限り硬化しませんが、1液ウレタンは残った塗料の保管方法が難しいです。容器の中の空気量
をできるだけ少なくし(使う度に口の小さなビンに移し代える)、冷暗所=冷蔵庫に収納し・使用に際しては常温に戻して
から使います。「かぶり」を生じさせない為です。遣い残しの塗料の保管が悪いと2年程で硬化して使い物に成りません。
溶剤を足してもダメです。
 私の使用感では、概してウレタン系は溶剤を入れた場合・当然「ゆるく」成りますが「飛び=乾燥」は早く成る様な気が
します(合成漆も)。 そう云う意味で「塗る前の充分過ぎる検討」「手早い作業」が肝要です。


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